女の戦い 第一話

---

ファル「はぁっ！」


















アスタロト「フン」


















ファル「行きますわよ！」

アスタロト「来い」


















カキンッ―――

一際大きい金属音を響かせながら、その日の模擬戦は終わりを告げた。


















ファル「今日も手合いに付き合って頂いて有難うございますわ♪」

アスタロト「なに、私自身の鍛錬にもなっているんだ。礼には及ばないさ」


















ファル「でも不思議ですわね。あなたほどの神姫が手元にいるのに、王子様はあの天使型といつも一緒にいるんですもの」


ファルクラムは日頃からオーナーのことを「王子様」と呼んでいた。
変わった呼び名であるが、それこそが彼女がメンヘラと呼ばれるゆえんである。

また、あの天使型とはもちろんアンネのこと。


















アスタロト「アンネは…まぁ、アイツが一番最初に起動させた神姫だそうだしな」


















ファル「それが解せないんですわ！
ただ一番一緒に長くいたと言うだけで、彼女のような戦闘センスのかけらもない様な神姫が、のうのうとパートナーの座に居座っているのですから」

アンネ「…………」


ファルクラムはわざとそばにいたアンネに聞こえるような声で言い放った。

しかし、ファルクラムのいったこともある意味では間違っていない。
と言うのも、アンネには攻撃力、命中精度、回避、防御と言った基本的なセンスも高くない。
更に極めつけとしてLPセンスは大幅に外しているため耐久力が低く、少しの攻撃で致命傷となってしまう。
また、スキルには最初からレベルを割り振られていなかった。
これが元でアンネはオーナーの手によりバトルから遠ざけられたのである。
















グリペン「あらら、何か険悪な雰囲気だよぅ……」

ジュラ「あの新入り、言いたい放題言ってくれますね…！」


















ジュラ「お姉様、あんな奴の言うことに耳を貸してはいけません！
それにマスターはお姉様とずっと一緒だと言っていたじゃないですか」

ファル「一緒にいるだけでしたら、ここにいる全員が同じなんじゃなくて？それとも王子様はは貴女にちゃんとした告白なりプロポーズなりなさったのかしら？」

ジュラ「くっ……！」

ファル「してませんわよね？つまり貴女は王子様にとって貴女が思ってるほど特別な存在じゃないってことじゃないかしら」

アンネ「…………」


















ジュラ「マスターとお姉様の関係は私達皆が認めてますし応援しています！今更あいつなんかに…」

ファル「私は認めていませんわ！そもそも私たち神姫がなぜ強力な武装を施されるようになったかご存知？」

アンネ「…………」

ファル「オーナーの誇りのために戦うと言うのもあるけれど、いざという時オーナーの身を守るための護身用でもあるんでしてよ？
だったら、私の様に強くて美しい神姫の方がパートナーには相応しいと思いませんこと？
役立たずの貴女なんかより…」


















ファル「きゃっ！」

ジュラ「それ以上の侮辱はこの私が…！」


















アンネ「止しなさい、ジュラ！」


















グリペン「アン…ネ？」

ジュラ「ですが姉様…」

アンネ「ファルクラムさん…あなたは私が戦えもしないのにマスターのそばにいるのが不満なんですよね？」

ファル「やっと分かってくれまして？えぇ、その通りですわ♪」


















アンネ「だったら……私と勝負しましょう」

ジュラ「！？」

ファル「あら、良いですわね♪景品はさしずめ王子様、と言ったところかしら？」

アンネ「えぇ、その通りです…勝った方がマスターのパートナーとなり、負けた方は身を引く。それで良いでしょう？」




















ファル「えぇ、もちろん。むしろ望むところですわ♪」

ジュラ「……お姉様」

グリペン「うぅ…何か大変なことになっちゃったよぅ」








第二話へ続く